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A.「母の葬儀で長男である私が喪主を務めます。挨拶で気をつけなければいけないことを教えてください。(48歳男性)」
お母様のご葬儀の喪主を務められるとのことですが、喪主というのはお母様を亡くして悲しいうえに、何かと神経をつかうことが多いものです。特に、ご挨拶なさるということは緊張するものです。まず、上手に話そうとしないことです。ご自身の言葉で、平易な言葉で、ゆっくりと誠実に話すことが大切です。
こんな感じで話し始めたらいかがでしょうか。
「故人の長男の靖男と申します。本日は母のためにご会葬いただき、厚く御礼申し上げます。」自己紹介をし、会葬いただいたお礼を言います。このときゆっくりとお辞儀をします。この後、故人が自分たちにとってどんな存在であったかを話すといいでしょう。「母はご存知の方もいらっしゃるでしょうが、勝気な性格でした。しかしそれは間違ったことが嫌いということからきており、性格はまじめで、家庭では子どもや孫をたいそうかわいがってくれました。頼りになる母でした。」
あるいは、「母は外では静かな、引っ込み思案なところがありましたが、家では全てを切り盛りしてくれるよくできた母親でした。」自分の親だから謙遜するのではなく、故人の良かったところをはっきり話すことが大切です。こんな話し方もあります。
「母は早くに夫を亡くしたため、働いて私たち3人の子を育ててくれました。貧しくはありましたが、愛情をたくさん注いでくれて、子どもたちにとっては母は誇りでした。」故人のことを報告したら、臨終のことを会葬者に報告するのもいいでしょう。たとえば、「母は、3ヶ月前に”体調が悪い”と訴え、市立病院で診ていただいたところ、がんの末期ということで即入院となりました。痛かったろうと思いますが、病院の先生方に痛み止めを打っていただき、最期は1月15日、家族が見守る中、穏やかに息を引き取りました。」
あるいは、「母は、最後は寝たきりになり自宅で訪問介護を受けながらでございました。1月15日、朝家族が様子を見に行きましたら、眠ったまま息を引き取っていました。長年暮らした家で最期を迎えることが出来てよかったと思います。」
挨拶の最後はお礼で締め括ります。「本日は、母・田中明美のためにご会葬いただき改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。」お礼の言葉はゆっくりと話すことがポイントです。お礼を言ったら深く頭を下げます。
もう一つ例をあげておきましょう。「今日は母が生前に大変お世話になった方々にお越しいただいております。母に代わりお礼を申し上げます。ありがとうございました。」
全体にゆっくり、はっきりと話すことが大切で、気の利いたことは言う必要はありません。ポイントを整理すると、
1.会葬者へお礼をする。
2.故人の思い出を語る。
3.できれば死亡の状況を報告する。
4.改めて会葬者にお礼をする、となります。
挨拶文の文例であ「賜りましたご厚誼に対し」「ご多忙中のところ遠路はるばる」などという型にはまった表現が見られますが、無理をせず、易しい言葉で話すことのほうが、相手に気持ちが伝わります。喪主が挨拶するのは出棺や葬儀の後の挨拶だけではありません。いくつかの場面での文例をあげておきましょう。
●通夜での挨拶
「本日は、母・田中明美のためにお越しいただきありがとうございました。この後ささやかな食事の用意をしておりますのでお時間のある方はしばしお残りいただき、母の思い出話などしていただければと思います。」
●会食後の挨拶
「本日は朝早くからお世話になりました。母に成り代わりお礼申し上げます。今後ともよろしくお願い申し上げます。」